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加えて国と地方の長期債務の合計は七百七十八兆円、GDPの約一・八倍と世界で断トツの借金大国であり、これ以上の財政支出で経済を拡大するという選択肢は取りえない。
一言で言えばもう「数字を追っかけること」ができない。
すなわち、下村博士が指摘したもう一つのこと、「ゼロ成長」を現実のものとして受け止めなければならないのである。
日本に課された課題は、現実を直視し、アメリカの子分であることも止め(子分であるということは、従属するとともに面倒を見てもらうことでもある)、身の丈にあった新しい生き方を見つけることではないだろうか。
「ゼロ成長時代の生き方」、「ゼロ成長時代に目標とする新たな指標」、「何を以て成功とするのか、その成功の定義」を自ら考え見出さなければいけない時代にいま我々はいるのである。
日米安保体制も、遠くない将来に必ず見直しを迫られる時が来るだろう。
私は、米中露という核保有国に囲まれた日本にとって、日米安保体制に替わる防衛政策(例えば大国に囲まれたスイスが採った「永世中立」という生き方)を模索しなければならない時がすでに来たと考えている。
アメリカに生まれつつある新たな兆し日本と同様、アメリカも生まれ変わらなければいけない時代を迎えている。
これまで述べてきたように、すでに経済的に世界唯一の超大国でもなければ、ドルも世界唯一の基軸通貨ではなくなった。
戦勝五カ国で形成している国連安保理の常任理事国など、とっくの昔に機能しなくなっている。
下村博士の指摘のように、IMF、世銀を中心としたブレトンウッズ体制も崩壊して久しい。
そして「信用の輪」が切れ、長大な不良資産を抱え込んでしまった。
その一方で、アメリカは決して捨てたものではない国であることも忘れてはなるまい。
私はこの国の新しい国づくりの息吹も感じている。
アル・ゴア前副大統領は、ビル・クリントンがモーーカ・ルインスキー余ワィトハゥスの研修生)と洋気をするという馬鹿なことさえ起こさなければ誠おそらく大統領になっていたと思っている。
ジョージ・ブッシュと大統領のイスを争って、フロリダ州のわずかな票の行方の差により、彼は大統領になれなかった。
しかし、そこから彼は地球環境問題を採り上げ、全世界を民間飛行機に乗って行脚し、粘り強く自らの思想を伝えてノーベル平和賞を受賞した。
ビル&メリンダ・ゲイッ夫妻はマイクロソフトを築いて得た富のほとんどを慈善事業に寄付するとともに、新しい資本主義のあり方の提唱を始めた。
二○○八年のダボス会議で、彼は「資本主義の欠陥に我慢できなくなった。
富める者に報いる資本主義を、貧しい者にも報いるようにする方法を見出さなければならない」と主張した(ウォール・ストリート・ジャーナル)。
彼が目標とする資本主義とは、おそらく「機会の平等」が「結果の平等」に結びつくような資本主義ではないかと私は考えている。
マイク・ハッカビーという元プロテスタント牧師にして元アーカンソー州知事は、「お金が無ければ大統領選挙に出る資格はない」という常識を打ち破るために、共和党の大統領予備選挙に出馬した。
バラク・オバマの出現そして、最も大きな「変化」の象徴は、何と言っても民主党大統領候補となった、バラク・オバマであろう。
初の黒人の大統領候補が、民主党から選ばれた。
民主党の大統領予備選挙に足を運んだ人は共和党の倍にのぼる。
さまざまな世論調査の数字を見る限り、この勢いであれば、彼が次期大統領に選ばれる可能性は十分ある、と私は見ている。
選挙戦が始まったころには、黒人でさえ「黒人が大統領に選ばれることなどあり得ない。
だから泡沫で終わる黒人候補よりも黒人に理解のある白人(ヒラリー・クリントン)を選ぶのが現実的」と考えていたくらいである。
かつて、黒人差別の撤廃を求めて非暴力の公民権運動を主導し、黒人のみならず、アメリカの一部白人からも支持され、ノーベル平和賞も一受賞したマーチン・ルーサー・キング牧師は暗殺された。
コリン・パウェル元国務長官は、大統領候補と言われながらも暗殺を恐れる家族の声を尊重し、出馬しなかった。
圧倒的な支持があったとしても、アメリカでは黒人が大統領候補になることは、今でもきわめて困難なことなのだ。
しかし、アイオワ州という州民の九二%が白人の州で、オバマが勝って以来、流れはすっかり変わった。
「黒人でも大統領に選ばれ得る」ということが、アメリカ人に「自分たちは自分たちの社会を変えることができる」という自信をもたらしたのではないだろうか。
オバマが訴えてきたのは「CHANGE(変化)」である。
既得権者、ロビイストとの決別を訴えている。
「ウォール街に耳を傾けるのではなく、メイン・ストリートに耳を傾けること」と演説する。
このように、資源と環境の制約を認識し(ゴァ)、世界の低所得層に配慮し(ゲイッ夫妻)、保守的な価値観を尊重し、国民のボランティアを求めることにより小さな政府を目指し(オバマ、ハッヵビー)、政治を既得権者のものから国民の手元に取り戻す(オバマ、ハッヵビー)ならば、アメリカの経済社会はまともなものに生まれ変わる可能性がある。
そのような改革は、この国の民主主義の強さに支えられている。
今回のアメリカの大統領選挙は、アメリカ国民にとっても、日本国民にとっても、一つの時代の終駕を新しい時代の誕生に結びつけることができるかどうかの、大きな分岐点となることを意味しているように思われる。
日本の新たな価値観の創造と、新たな国づくりへの運動は、むろん日本国民自らが始めなければならない。
その運動はいったいどこから始まるのだろうか。
どこかに、密かに準備を進めている人はいるのだろうか。
日本再生への息吹私はウォール街に生きている人間だが、日本人の「心」まで捨てたわけではない。
反米主義者でもない。
ただウォール街に生き、ウォール街の堕落をつぶさに見てきたからこそ、日本と日本人の行く末を案じ、これからの世界の有り様に不安を抱く。
日本人が日本人たる「心」を取り戻し、伝統的な価値観に則って、再び日本人らしく生き、日本の伝統文化を再興する可能性があることを信じている。
日本人の中に流れているDNAは、何代にもわたって継承されてきたものであり、一世代ごときで消滅するものではないはずである。
むしろ、日本人が、日本人としての価値観に戻るとき、世界経済の手本となるような、新たな資本主義を提案してはくれないものかと期待している。
なぜなら、最近さまざまな仕事に生きている日本の友人たちと話をすると、そんな新しい日本の国づくりの息吹を感193私はこの話に大いに賛同した。
「日本もファンドだREITだといろいろな入れ物をつくって、バブル後の不動産投資市場が形成されたが、金利が上がり始め、世界の信用市場が壊れつつある。
明らかに転機が訪れている。
これまで暴利をむさぼってきた貧欲なプレーヤーは退場を迫られている」(不動産会社A社役員)「金融資本が産業資本を牛耳り、これを振り回すこと自体がそもそもおかしなことだ。
金融とは産業を支援する役回りだというもとの姿に戻さなければならない」最近会った友人たちの印象深い話を記しておきたい。
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